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第10回 世界絵画大賞展ロゴ画像

「第10回 世界絵画大賞展」 審査員の言葉

審査員長 佐々木豊(画家)

「遠近法の勝利」

安全株である。いずれも確かな腕でそつなくまとめられている。
そんな絵で上位が占められた。

中で、東京都知事賞の吉田征輝氏だけが、おやっと思わせる視点の逸脱を試みている。
俯瞰図なので普通なら3点透視法で描くべきである。視点をわざとずらして得る建築群のゆがみをとり込んで、不思議な風景画に仕上げている。

よく見ると画面左上は切り貼りである。そこにゆがみのもとが?「青年は安全な株を買ってはならない」と言ったJ・コクトーの箴言を勝手にこの絵にあてはめて、大賞に推そうとしたのだが、筋書きがずれた。

大賞の大越みさき氏も遠近法をとりこんだ絵である。手前の大木のゆきつく先に流木が重なっている。
大震災後、がれきや流木群は多くのメディアで目にしたので、このようなイメージがつむぎ出されたのだろう。

画面の上半部を占める空虚な青空が、興味の中心である、細やかな材木群を際立たせている。

優秀賞の西山万智氏は、一点透視図法をあからさまに援用した絵である。見せどころの猫まで、消失点に向かって立っている。

このように、遠近法の法則に従って構成していけば、迷いはなく「そつなくまとめられ」るのである。

優秀賞の古暮千恵子氏も、遠近法で河を描いている。凡庸な風景画家が、画面の3分の1上部に、描きたがる地平線や空を、外へ追いやって、前景の人物群と、水面だけを絵にしている。
岩や水の深みのある色彩や、材質表現も非凡である。

佐々木豊賞の橋本礼奈氏には、素描に支えられた緻密な表現力に期待する。

審査員 絹谷 幸二(画家・東京藝術大学名誉教授・大阪芸術大学教授)

第10回世界絵画大賞展

世界絵画大賞展のレベルは年ごとに進歩をとげている感じがあるのだが、今年は最終審査になってもこの一作が大賞や賞にしぼり込まれるだろうという予感がしないまま選考が進んでいった。

つまり、レベルが高止まりしている感があり、頭抜けて独自の個性を楽しんでいる作が無かったといっても良いだろう。平均化していて作者の作風が固定してリスクをおかして挑戦をしないという安定を求めた結果なのかもしれない。

絵画は時代という舟の舳にならなければならないのだろう。今後の皆さんのご精進を願っています。

 さて、絹谷幸二賞の伊藤千恵さん「顔」は、正に力強い作品で他に類をみない秀作だと思います。
クローズアップした半開きの歯の表現、鼻や皮膚、どこを取っても良く描きこまれています。
現代人の心の内面があますとこなく見る者に伝わってきます。

 大賞の大越みさきさん「つみき」は倒木が流れついて小山の様になっています。
3月11日を思いだされる様な画面ですね。背後の青い空が何かむなしい感じがします。ていねいに描かれて安定した画面になっています。

 優秀賞、西山万智さん「気配、夕暮」は何か不思議な夕暮の一瞬を捉えています。
うつろな空間は残照のむし暑さと動きのない空気感が表現されていますね。ただもう少し描き込みがあれば作品として強い画面になります。

 優秀賞、古暮千恵子さん「イノセント」は川辺に遊ぶ子供さんがいとおしく、美しく描かれて作者のやさしい眼差しが感じられます。
少しクラシックですがこのお作に現代の「新味」が加わればより良いでしょう。

 都知事賞の吉田征輝さん「曖昧な記憶の風景U」は連続コラージュの不思議な画面になっています。
都知事賞にふさわしい浅草の新しい風景画となっています。

 最後に、受賞作にならなかった作品、又入選もかなわなかった作にもキラリと光る感性が感じられるものも多々あったことを記しておきたいと思います。

審査員 本江 邦夫(美術評論家・多摩美術大学教授)

「静かな絵が多かった」

 全体として大人しい、それだけに丁寧な仕事が多かったように思います。
低調というのとは、ちょっと違います。

大越みさきさんの大賞作品は、おそらく3・11の記憶を宿しながらも、醒めた目ですべてを堆積された廃材として見切り、その上で晴朗かつ静謐な青空の希望を提示したところに新味があります。

「静けさ」は今回の世界絵画大賞展の通奏低音のごときものかもしれません。

西山万智さんの人気のない、猫が一匹だけいる店内の夕暮れを、心理的な隔たりを演出する遠近法でとらえた作品にもそれは明らかです。

古賀千恵子さんの、川辺で遊ぶ幼女たちを見下ろすように描いた絵にしても、水の音はきこえず、むしろ記憶の内なる永遠に静止した一瞬のヴィジョンのようです。

そうした中で、記憶の町を真上から見下ろした吉田征輝さんは実に大胆な構図を現出せしめはしましたが、ここでも画面を覆うのは不思議な静けさではないでしょうか。

 不思議な静けさ、というのは吉田諭史さんの、おそらく郊外風景にも通用する言い方でしょう。
色も光もどこか瑞々しいのは、一雨来た後の夏の夕暮れを描いたからでしょう。はっきりと決めつけるわけにはいかないのですが、私はこの絵には「写真」つまり現実を便宜的に皮膜化し記号化することで複製する手段の影響をほとんど感じません。作者の生の感覚が絵の中に染み通っています。

 人と世界との関係が日増しに素っ気無くなっていく時代だからこそ、少なくとも絵画においてはモチーフや主題との直接を失ってはならないと思います。相沢僚一さんの、コミックに出てくるような少女、天川美彦さんの、風に吹かれる裸婦に血が通い、それなりの印象を残すのは、モデルに対するそれぞれの強い思いの当然の成果と言えるでしょう。

審査員 遠藤 彰子(画家・武蔵野美術大学教授)

「10周年を迎えて」

 世界絵画大賞展も今回で10周年を迎えることになった。過去の受賞者・入選者の中には、美術界での活躍が伝えられる者もおり、少しずつコンペとしての風格と意義が出てきたように思う。

「継続は力なり」という言葉は、出品する制作者に対してだけではなく、主催側にも当てはまるのだと、この十年間携わってきた者として感慨深く思った。

 今年は、自己の内面から映し出された風景や、物語性の強い作風が多かった。
画材は、油彩画とアクリル画が一番多いが、日本画、水彩画、鉛筆画、版画と多様な表現手法が見られた。

 大賞の大越みさき氏の作品は、最終審査の段階で一際目を引いた。抜けるような青空の下に広がるモノトーン調の流木群に無言の怖さを感じると同時に、郷愁のような懐かしさを覚える不思議な感覚を味わうことができた。今後の活躍を期待したい。

 優秀賞の西山万智氏の省略化された空間は、本質的部分を把握しているようでありながら、意図的に余計なものも描かれている。その本質的な核のような空間と、意識的に引っかかるように描いている部分との関係性が面白く感じられた。あたたかいぬくもりと、不安な感覚が共存しているかのような不思議な世界観が良い。

 遠藤彰子賞の徳田景氏の作品は、外にいる鳥と部屋の中にいる鳥カゴを身に纏う女性とを対比させることによって、何とも言い難いある種の感情が浮かび上がってくる。着想やモチーフ自体はこれまでに幾度となく用いられてきたものではあるが、細部の丁寧な描写によって、個々のメタファーにリアリティが加味され、微妙なズレによって生じる違和感を、不可思議さに変えているように思う。
画面に流れをつけ、部分と全体が呼応するように構成できるとさらに良くなるはずである。

 今後とも、個性豊かな作家が、一人でも多く活躍されることを願っている。

 


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