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第9回 世界絵画大賞展ロゴ画像

「第9回 世界絵画大賞展」 審査員の言葉

審査員長 佐々木豊(画家)

「関口倫世−雲は何なの?」

いざ行かん、論爭の炎の中へ。審査の楽しみは大賞を決める波瀾万丈の大団円にある。候補作を前に各審査員の器量も問われるのだ。

と、「三票だからこれに決まりね」ちょっと待った。そう簡単に決められてたまるか。その票は単なる賞候補、大賞に投じたのではない。

これとは、関口倫世氏のスナップ写真をもとに描いた母子像である。で、イチャモンをつけることにする。「この雲みたいのは何なの?」この雲に作者の狙いどころがあるように思えたのだ。あ、もう一つある。顔という見せどころの設定である。顔が強い明度対比によって浮かび上がり、歩道などの奥へ向かう線や横の線はすべて、顔へ向かうように設定されている。だが、雲は何なの?

挑発にのって各人各説。難しい説もあり、ここで紹介するのは無理でござる。

この雲は放射能なのだ。そこから息子を守る母親がこの絵の主題なのだ、と小生勝手に解釈して、賛同したのであります。論爭や誤解を生む絵は何か在るのだ。

優秀賞の阪元沙耶香氏の少女は、影をつけないで立体感を表しているところが秀逸。単純な明と暗の大きな形のパターンで画面が構成されている。これが訴求力を強くする秘訣なのだ。

鈴木剛氏の顔の絵には影の発見がある。影が形態の起伏を強めるという。

東京都知事賞、日高美香氏の幻想写実は、緻密さを買う。佐々木豊賞の今崎幸一氏は大人の児童画だ。油絵らしい厚塗りの魅力にあふれている。

審査員 絹谷 幸二(画家・東京藝術大学名誉教授・大阪芸術大学教授)

第9回世界絵画大賞展

年を増すごとに本展の出品作はみごとに水準を高め、入選することすら難しいレベルに達してきている。つまり選にもれた作の中にも、将来成長を望めるものも多々存在していたことをまず言っておきたいと思う。

 日頃の皆さんの絵を描く熱い心意気を感じつつ審査をさせていただいた。

中でも大賞の関口倫世さんの「記憶の庭」は数ある作品の中でも画品がととのい、張りのある画面は作画技術と絵の内容がバランスよく描き込まれ、高貴な気配が漂い秀逸だった。

画面に漂う蒼い断片が世相を写しだしているのか、黒々と縁取られその破片が空中にも地面にも覆いかぶさっている。何からお子さんを抱き守ろうとしているのかは不明だが、関口さんの記憶の庭はセピア色の過去の情景を思いださせながら、現代私達が気を逸らそうとしている現実を、空気汚染や照り返す道路による温暖化又は交通事故などなど、画面は我々に多くのことを語りかけているのだ。

 優秀賞の阪元沙耶香さん「ハートの火をつけて」は顔を染める少女の恥じらいと、愛を求める勇気が女心に軽やかに混在して初々しい。そして画面下の花にかくれてひそむ彼の存在が又、奇知に富んでいると言える。

 優秀賞の鈴木剛さんの「無題」は男の目線にどきっとする。迫力があり、個性的な作となっている。絵は決して上手ではないが、上手でないだけに筆が滑らず、饒舌ではないだけに素朴な魅力をかもし出していると言える。

 絹谷賞のあべゆかさんの「Sorry for love to party」も上記と同様な力感があり、近頃少なくなった野性味と厚塗り画面の迫力、そして思いもかけないドッキリ感が内在している。

 協賛社賞のユアサエボシさんの「興行師」は何ともいえない空気感が漂い、他に類を見ない画面は現在人のどこに存在するのかも定かではない不安を見事に表現している。

 動物の顔が人間の顔に変じている東京都知事賞の日高美香さんの作品は、ともすれば有りがちな発想ではあるがよく描き込まれた画面には説得力があった。生きとし生けるもの達へのメッセージとして。

 以上受賞作にはならなかったものの素晴らしい作品が多く見受けられた。中でも、画面が小さいということで受賞にいたらなかったものや、もう少し描き込みで粘れば良かったもの、個性が他の作品と競合していたものなど、あと一歩、もう少し、といった作品が見受けられた。今後の皆さんのご努力を待ちたいと思う。

審査員 本江 邦夫(美術評論家・多摩美術大学教授)

遠く深い反響

今回の世界絵画大賞展は例年と比べるとやや低調な感じがしました。全体的に質は安定はしているのですが、突出したものがありません。また、これは私だけの感想かもしれませんが、大震災の遠く深い反響がまだまだ消えていないようにも思われます。絵というのは人の心とつながっていますから、これは当たり前のことかもしれません。

 大賞となった関口倫世さん≪記憶の庭≫は、おそらく写真に想をえたものでしょう。懐古的な時間を演出する遠近法のもと、「光」を侵食する「闇」を描ききる描写力の確かさで印象的な作品ですが、いつもの大賞作品と比べるとやや大人しい感じです。これに対し、阪本沙耶香さんの少女像の価値は煽情的な主題よりも、アクリルの特性を生かした明晰な造形性にあります。鈴木剛さんの半ば影に入った「男の顔」がなぜ「無題」なのか―まさに時代の陰影を感じます。日高美香さん≪餌付け≫は人と動物と植物を隠喩的に結びつけた構想が異色、描写も確かです。

 重松ふら乃さんの描くどこか魔術的な舞台は、たっぷりした空気感と奥行を実現しつつ、そこで何が起こるか分からない、不穏な気配を秘めているところが非凡であり、異色です。

 他にも注目すべき作例があり、これはやはり「反響」とは無関係とは言えないでしょう。たとえば土井麻利江さんのモチーフすら確定できないはかない描写―しかし、このはかなさに真実があるのです。池田艸さんの描く廃屋かもしれない私設天文台(?)は、自らを透かして背景の青空を見せているところがまことに切ない。中川暁文さんのモチーフ、虚空の彼方にかすかに見えて響くヘリコプターを、おそらく手をかざして見上げる私たちは実のところ何を眺めているのでしょうか?

審査員 遠藤 彰子(画家・武蔵野美術大学教授)

審査を終えて

昨年から世界絵画大賞展で選ばれた入選・受賞作品が、東京都美術館で展示されることとなった。その影響もあってか、出品者の基礎的なレベルが前年よりさらに向上しているように感じた。

大賞の関口倫世さんの作品は、幸せな家族写真に、劣化のようにも見える抽象性を帯びさせることによって、目に見えない不安や恐怖といった感情を想起させることに成功している。一般的に他人の家族写真を見て、面白いと思う者は少ないはずである。それを逆手にとるように画面に抽象性を施し、個人的な問題が社会的な問題でもあるように感じさせたところを高く評価した。

優秀賞の阪元沙耶香さんの作品からは、’60〜’70年代頃のアングラ的な空気を感じさせる。ユニークで独特なフォルムと、センスのよさを感じさせるので、小さい枠に囚われずに色んな題材に挑戦して欲しいと思う。

優秀賞の鈴木剛さんの作品は「なんか良い感じ」である。独特な色使いと、絶妙な手の抜き方がとても心地よく、寸前のところでとどめておくというセンスはなかなか良いと思う。1点というより、30点ぐらい並べた個展を見てみたいと思った。

遠藤彰子賞の大隈伸也さんの作品は、作者の等身大の日常から異空間を拾うような作品に仕上がっている。目の前にある風景を絵として捉えようとする視点と、それを絵にしてしまうところが、私のツボにはまった。

世界絵画大賞展も今年で9回目となった。過去の受賞者の中に、美術業界での活躍が伝えられる者もおり、年々世界絵画大賞展の意義は上がってきている。今後とも、個性豊かな可能性のある作家が、一人でも多く活躍されることを願っている。

 


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