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第8回 世界絵画大賞展ロゴ画像

「第8回 世界絵画大賞展」 審査員の言葉

審査員長 佐々木豊(画家)

あっけなく決まった大賞

大賞がこんなにあっけなく決まっていいものか。
もっと、もめなくちゃ。言い争っているうちに、その絵の良さに気付かされることだって、あるじゃないか。
そう思ってけしかけるのだが、「4人のうちの3票でしょ。決まりですよ。」とそっけない本江邦夫氏。

優秀賞になった、板橋知也氏の“がれき人間”にご執心の様子だ。

この絵は見るほどに津波の悲劇を鋭く表現していて、大賞でも、という思いを強くする。
深読みかしらん。これで17歳。絶句。

絹谷幸二、遠藤彰子の両審査員のうち、どちらかが支持すれば、3票同士でおもしろくなったのだが…。

大賞の山本登志子氏に不満があるわけではない。
四角い画面をマルチに使った構成、びんの中のドラマ、だまし絵風の技法、どれをとっても非凡である。マルチに固定しない、柔らかな発想に期待したい。

平野良光氏の密度のある表現力にも注目した。ボスもあっと驚く異界を描き出してもらいたい。

芦田いずみ氏の「大江戸線」はうまい絵だ。
横に流れる乗客群が、手前の柱によって分断される。この柱によって、空間と臨場感がいっきに出現した。
鉛筆で描かれた乗客を、彩色したらどうなるのかしらん?

佐々木豊賞の薗まゆみ氏は、都会派の中にあって、唯一の土俗派だ。
「土俗は永らえるけれど、モダニズムは短命」と、’70年代に高名な美術評論家が言った。当っていると、今思う。

審査員 絹谷 幸二(画家・東京藝術大学名誉教授・大阪芸術大学教授)

毎年、本展の出品作品のレベルが出品数と共に上がり、ますます入選することすら激烈になって来ているようだ。

その様な中で大賞受賞の山本登志子さんの「shut space」は特に審査員の眼にとまった。
ガラスビンの中に閉じ込められた様々な物語は現代社会の閉塞感を、鋭く映し出している秀作だといえる。
そして右下の壊れたビンが何を意味しているのだろうか。
ビンの中には何も無く、ビンが壊れることによって生まれる解放への希望なのか、見る者を考えさせる作品でもある。

優秀賞の板橋知也さんの作品は、広大な青白い海辺で挫折する人物。
何か去年の大津波を連想させる様な痛々しい姿。海は元通りの静寂な海辺に立ち返っている。
絵は人々に忘れてはならない事を指し示している。この作品の素晴らしい所だと言える。

なお、同賞の平野良光さんも仕事が緻密であり、技術の冴えを見せている。

東京都知事賞の芦田いずみさんは、コンクリートの都会を疾走する地下鉄。その内部に素写されたさりげない日常。
上辺にテロップが流れ、電車は流されてゆく都会の人々の生命のカプセルなのだろうか。佳作だと言える。

絹谷賞の阪元沙耶香さんの作は、前述の社会的な問題や意見といったものは何一つない。
あどけない少女の夢見る姿を草原に描ききって見目新しく清々しい。
そして少し少女の未来への予感といったものまで感じられるのは、小動物達が働き巣作りをしているリボンの後方にある土のお家と小窓に、幸せな家族の想いがあるのかもしれない。

最終選考に残った田中瑞穂さん、平田望さん、福島亜紀子さん、市塚寛子さんは、それぞれに筆力があり、画面中央に大きく人を描き込み、それぞれの世界を描ききっている力作ぞろいだと言える。

又、井上琢さん、今津奈鶴子さんは自然界の動植物を丹念に描き込み、曲渕幹人さんは、都会の小さな公園を、そして山内透さんは独自な遊泳感覚を持っていて、清々しい作品となっている。

なお、選にもれた作品の中にもきらりと光る諸作があったことを最後に記しておきたいと思う。
画友の皆様の益々の御健闘を祈っています。

審査員 本江 邦夫(美術評論家・多摩美術大学教授)

見方の違い

今回の審査では珍しく画家と批評家の見方の違いのようなものを感じました。

最終段階の投票で山本登志子さんの現代社会・生活のさまざまな断面をそれぞれに瓶詰にし、標本のように並べた作品の主題性と描写力に私以外の3票が入ったので、これが大賞となったのは当然のことです。

私がこれを選ばなかったのは、暗示的な意味合いを出そうとして一つだけ置かれた、壊れた瓶の表現に平板なものを感じたためです。

今年は全体として低調とは思いつつも私が推したのは中田恭平さんの、男のうずくまる部屋の中にまた小さな部屋と小さな人間のいる、これまた状況的な鬱屈した作品でしたが、興味深いのは、作品を特徴づける単色の面の広がりに、佐々木委員長が「画家としての仕事をしていない、手を抜いている」と反応したことでした。
私自身はそこが、つまり抽象的な色面で具象的な世界を描くところが面白いと思ったのでした。

青い海と空を背景に、壊れたオートバイ=人間が悲嘆にくれる場面を描いた板橋知也さんがまだ17歳と知って、びっくり!
雄大な構想に今後の可能性を感じます。

平野良光さんのさまざまな断片が集積したヴィジョンは、実のところ何の絵かまったく分からないのですが、抜群の存在感を見せています。

芦田いずみさんの大江戸線の車中を見下ろし、克明に描写したものはアイデア賞ともいうべき佳品。

坂元沙耶香さんの一見流行的な少女の絵は、ずいぶん面白いものでしたが、これ1点だけではどうにも判断がつかず、選び損ねました。

出品既定の30号というのは意外に難しい条件であり、描く側にはそれなりの対応が必要です。
山内透さんの、それ自体は衝撃的なまでに異形であるはずの人物がそう見えないのは、画面の大きさの認識が甘いためです。

審査員 遠藤 彰子(画家・武蔵野美術大学教授)

審査を終えて

世界絵画大賞展で選ばれた入選・受賞作品が、ついに東京都美術館で展示されることになった。

若手作家に大きな会場での発表の機会が提供されたこと、また広く作品を紹介出来ることは、彼らが世に出て行くことを後押しするという意味において、大変喜ばしいことである。

今後、個性豊かな可能性のある作家が、一人でも多く美術界で活躍されることを願っている。

大賞の山本登志子氏の「shut space」は、それぞれの瓶に封じ込められた瞬間的な物語と、それらを均等に並べられることによって発せられるコレクター的な要素を内包した強いフェティシズムのようなものを感じさせた。
絵としてみると一見地味に見えるが、立体的な額と平面に描かれた棚には騙し絵的な要素もあり、審査会場で一際目をひく存在であった。

優秀賞の板橋知也氏の「Us」は、新鮮な感覚で描かれている様子が画面から伝わってきた。
コマーシャルのように明るい南国の浜辺とスクラップのような人影の組み合わせは、一昔前の空想絵画というよりアニメ的な感覚に近いように思える。
重くならずに、スコーンと抜けている感じが良かった。

東京都知事賞の芦田いずみ氏の「大江戸線無間」は、様々な画材で表現されており、その差異が上手く画面に溶け込んでいた。
絵肌は心地良いハーモニーを奏でており、新鮮な感覚で観ることが出来た。

遠藤彰子賞の本間佳子氏の「Sky 3」は、画面の左右にも重力を配しつつ、自然な形で1つの画面にまとめあげているところに面白さを感じた。

選外になってしまった作品の中にも、とても良い作品が多数あり、前年度より入選者が増えたとはいえ、なかなか厳しい審査となった。
作品は具象傾向が強かったが、世界絵画大賞展では、日本画や油絵といった素材の違いや、抽象・具象といった既成の尺度にとらわれることなく広く作品を募集しているので、様々な表現に挑戦し、新たな道を開拓して欲しいと願っている。

 


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